カジノ法案の現状についてのまとめ
♦カジノ法案の基礎的な知識から最新情報までまるごと解説!
「カジノ法案」(統合型リゾート(IR)整備推進法案)は、2016年12月に成立しました。
ようやく日本でも、カジノが解禁されるということで、詳細の決定に注目が集まっていたこの法案ですが、「ギャンブル依存症や治安に悪影響を及ぼすのでは?」などの意見も多いため、反対の声をあげる国民も多くいます。
カジノ法案成立の影響で、「日本のギャンブル事情はどのように変わって行くのか?」「日本で最初のカジノはいつどこにできるのか?」など、知りたいポイントを詳しく解説していきます。
♦1.カジノ法案ってどんな内容?
通称、「カジノ法案」と呼ばれていますが、正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」といいます。
要約すると「今後あたらしく統合型リゾート(IR)を作っていきましょう」という法律です。
カジノ法案の名称から誤解されることもありますが、カジノだけに関わる法律ではありません。
◼カジノ法案の目的
政府は、カジノ法案の目的を、以下のように定めています。
(目的)第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。 (基本理念) 第三条 特定複合観光施設区域の整備の推進は、地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与するとともに、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとする。 (※特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案を一部引用) |
ごく簡単に言い替えると
「IR(統合型リゾート)を作って観光客にお金を使ってもらい、財政難を改善しよう!」
「IR(統合型リゾート)には、カジノが含まれているので、しっかりと管理、運営をしていこう!」
ということです。
カジノ法案と呼ばれていますが、単純にカジノを解禁するための法律というわけではなく、本来の目的は観光客を集めることで、その手段としてカジノを含んだIR(統合型リゾート)を作り、運営していこうという法律なのです。
◼IR(統合型リゾート)とは?
それでは、統合型リゾート(IR)とはどのような施設なのでしょうか?
カジノのほかにホテル、劇場、映画館、アミューズメントパーク、ショッピングモール、レストラン、スポーツ施設、スパなどの温浴施設、国際会議場や展示施設など、いわゆるMICE施設を併設した複合観光施設です。
カジノのイメージが強いと思いますが、ギャンブル好きの大人が集まる場所という事だけではなく、大人から子供まで幅広い年代の方が楽しめる、いろいろな施設が集まったまさしく「リゾート」なのです。
◼世界のIRを紹介
「マリーナ・ベイ・サンズ」の屋上プールは、マーライオンとならびシンガポールのシンボルと言えるでしょう。皆さんも映画や雑誌などで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。 シンガポールは2つのIRをオープンした結果、観光収入が2倍になりました!日本のIRのモデルケースとして取り上げられてます。
・マカオ
日本からも近い身近な大規模IRといえばマカオ。「ヴェネチアン・マカオ」は、まるで本物のヴェネツィアの街にいるかの様!ゴンドラに乗ってショッピングなどを楽しむことができます。 他にも「ザ・パリジャン・マカオ」は、敷地内にエッフェル塔が高くそびえており、圧巻のスケールに目を見張るばかりです!
・ラスベガス
カジノと言えば真っ先に思い出すのがアメリカ、ラスベガス。たくさんあるカジノホテルのなかでも、ラスベガスで最初のカジノホテルとして有名な「フラミンゴ・ラスベガス」は、まさにオールド・アメリカンをイメージさせる伝統的なカジノ。映画で見るようなクラシックなカジノ体験が味わえます。
・モナコ
世界中の人が憧れる「リッチな国」、モナコのIRはゴージャスの一言につきます!宮殿の中にいるかのように錯覚してしまう「カジノ・ド・モンテカルロ」では、眼前にコート・ダジュールが広がるテラスで、優雅にカジノゲームが楽しめます。カジノファンなら一度はプレイを夢みる憧れのリゾートです。
♦2.カジノ法案のメリットと問題点
カジノ法案が成立するまで、6年もの間、非常に長い時間をかけて議論がなされてきました。
今でも反対派の意見は根強く残っていて、賛否が分かれる微妙な問題なのです。
この後は、カジノ法案のメリットと問題点を説明していきます。
◼カジノ法案で得られる3つのメリット
①観光による経済効果
②雇用促進
③インフラ整備による地域活性化
政府がIRの解禁に踏み切った大きな理由の一つが、外国人観光客をより多く集め、日本経済の活性化をはかりたいということです。
日本は、停滞しがちな経済状況を改善するため、観光立国としての地位向上を目指しています。
中国人観光客が、日本製品をごっそりと買い求める「爆買い」が話題になったのを覚えている方も多いと思いますが、その経済効果は大変大きいものでした。
さらに多くの外国人観光客を、日本に誘致するにはどうすればいいか?という望みを叶えるための一つの方法として、政府はカジノ法案を提案したのです。
また、大型リゾートが完成することにより、それにまつわる大量の雇用が生まれることや、IR周辺のインフラや都市整備がととのい、地域活性化が期待できることも大きなメリットです。
◼カジノ法案の主な問題点
①ギャンブル依存症の増加
②治安の悪化
③マネーロンダリングの懸念
カジノ法案への反対論として最も重大で多く聞かれる理由は、ズバリ「ギャンブル依存症の増加」への懸念です。
政府も、依存症対策が重要だということは理解しており、入場回数を制限したり、入場料を徴収したりすることによって、問題解決につなげようとしています。
また、「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立したために、これまでほとんど対策されてこなかった、競馬やパチンコのような既存のギャンブルも含めた、依存症対策が今後もはかられていく予定です。
ギャンブル依存の他には、「治安悪化の恐れ」や「マネーロンダリング(資金洗浄)がおこなわれる危険性」などの意見がよく聞かれます。
このような問題に対して、どのように対策を打っていくのか、今後の動きに注目が集まっています。
♦3.カジノはいつ開業するのか?今後のカジノ法案の流れ
カジノ法案(統合型リゾート(IR)整備推進法案)が成立したところで、つぎに知りたいのは「カジノはいつ開業するのか?」ということですよね。
カジノ法案が成立したとしても、カジノがすぐに開業するわけではありません。
ひとえに「カジノ法案」といっても、カジノ解禁に関する法律は数多くあります。
ここでは、カジノ解禁までに成立しなければならない法律と、その内容を、順を追って説明していきます。
◼カジノが開業するまでの流れ
①
「IR推進法」
成立
・最初の「カジノ法案」。今後の方針を定めた法律
IR推進法は、要約して言うと「カジノ管理委員会を設置して、カジノ施設の適切な設置・運営ができるように体制を整えて、健全にカジノを運営をしていこう」ということです。
地方公共団体の考えを重視し、IRの設置を行うことを基本方針として定めています。
あくまで、大枠の方針などを定めた法案なので、より具体的な整備、運営ルール、対策などに関しては、以降で説明する「IR実施法」や「ギャンブル等依存症対策基本法」で定められます。
②
「IR推進本部」
成立
・「カジノ法案」を円滑に運用するための国の組織
正式な名称は「特定複合観光施設区域整備推進本部」です。
安倍晋三首相が本部長で、IRの整備と推進を押し進めるために、IR推進法の成立をきっかけに、内閣に設置された機関です。
簡単に言うと「法整備などを含めて、IR開業のために必要な全体の流れを決める国の組織」です。
これ以降のIRに関する法律は、このIR推進本部で整備されて、国会に提出されます。
③
「IR整備法(実施法)」
成立
・より具体的なルールについて述べた法案
IR推進法案は「カジノを含むリゾート施設を運営していきましょう」という内容ですが、もっと具体的な制度などについて述べているのが「IR実施法」です。
「IR実施法」では、カジノ事業免許、入場料、入場制限、カジノ管理委員会の設置などが定められています。
④
「ギャンブル等依存症対策基本法」
成立
・「カジノ法案」最大の問題点への対策を法案化
「ギャンブル等依存症対策基本法」では、政府がギャンブル依存症対策に関わる基本計画を策定し、それを元に自治体や事業者が対策計画を決定すると定められています。
法の成立を受け、菅義偉内閣官房長官を本部長とした、ギャンブル等依存症対策推進本部が設置されました。
また、「ギャンブル等依存症問題啓発週間」を5月14日~20日までと定めました。
国や地方公共団体は、ギャンブル依存症の予防、啓発や、医療、相談体制の整備、患者と家族のケア、社会復帰のための支援など、さまざまな対策を立てることが必要になります。
本来はカジノを開業するために作られた法律ですが、パチンコについても触れられており、これにより、初めてパチンコが法律上ギャンブルと認定されることになりました。
⑤
「カジノ管理委員会」
発足
・「カジノ運営」を管理する組織
カジノ管理委員会は、カジノ事業者の監督、カジノ事業免許の審査、カジノゲーム関連機器の監督など、実際のカジノ運営に関わる業務を統括する組織で、総勢100人規模で構成されています。
IR推進本部はIR開業前の法整備などを担当しますが、カジノ管理委員会はIR開業以後の運営体制を統括するのが主な役目です。
カジノ運営に関する業務以外にも、「反社会的勢力の排除、ギャンブル依存症対策、マネーロンダリング対策など、カジノにまつわる問題の対策や、外国規制当局との連携業務も取り行います。
現在IRを運営している海外にも、国が認めた「カジノ管理委員会」と同じような組織が設置されています。
⑥
基本方針の策定
・実際の開業の基本ベースとなる方針
政府により、IR設置についての基本方針が策定されます。
自治体や事業者などは、この基本方針にもとづいて、実際のIR開業に関する業務を進めることになります。
IR整備法公布から2年以内に、「基本方針を策定する」と定められており、その期限は、2020年7月26日です。
基本方針案はすでに公表されていて、最終的な基本方針の策定、公表は、2020年1月の予定でしたが、2020年3~4月頃に延期となる見通しです。
⑦
候補地の正式決定
・日本初のIRが開業する場所を決定
政府がIRを開業する、3か所の自治体を正式に決定します。
それぞれの自治体が、実際に交通手段等のインフラ整備を始めるのは、この時期と考えられます。
⑧
IR事業者の選定
・各自治体がIR開発に協力する事業者を決定
政府がIR設置場所を正式に決定した後、選ばれたそれぞれの自治体は、協力してIRを開発するIR事業者を選定します。
正式に決定するのはこの時期ですが、IR事業者側はすでにIR施設の設置を予想する都道府県にオフィスを開き、地域のイベントやセミナーに協賛、出展したりと、熱心なPR活動を行っています。
⑨
IR開発~開業
・自治体とIR事業者は、協力してIR開発をスタート
協力する事業者が決まったら、IR開発計画が実際に動き出します。
IR事業者と自治体は、お互いが思い描くプランと構想をすり合わせて、開発から開業まで事業を進めていきます。
ここまできたら日本初のIR開業はもう目の前です!
果たしてどこに、どんなIRができるのか?とても楽しみですね。
・実際、カジノはいつオープンするの?
当初は「東京オリンピックに合わせてオープンしたい!」という声がありましたが、各法案の審議が長引いた結果、今ではそのタイミングに合わせてのオープンは不可能となってしまいました。
前述の開業までの流れを見るとわかるように、法案の成立後も関連する各法律や、インフラの整備など課題は山積みです。
これらの状況を考えると、カジノが開業するのは、早くても2025年頃ではないかと言われています。
大阪は万博前の開業を目指していますし、2024年までの開業を望む長崎など、自治体の思惑はさまざまですが、今後の政府の対応に注目が集まります。
♦4.カジノの有力な候補地は?
カジノ誘致に名乗りを上げている主な自治体は、東京、神奈川、愛知(名古屋、常滑)、大阪、和歌山です。
その中でも、特に有力な候補地とされているのは、横浜、大阪となっています。
首都圏では横浜が誘致を表明し、海外IR事業者が次々と事務所を開業するなど、事業者と国民の注目を集めています。
大阪もアクセスがよく、また2025年国際博覧会(万博)の開催が決定したため、カジノとの相乗効果で経済の活性化を狙っており、積極的にカジノリゾートの誘致に取り組んでいます。
これらとは別の発想で、既にある程度経済状況の整っている都心に誘致するよりも、地方都市に誘致したほうが、地域の活性化の面で良い結果を生むという意見もあります。
このような意見を反映して注目されているのが長崎県です。
長崎県は、佐世保市にあるハウステンボスの一角にIRリゾートを誘致することで、ハウステンボスとも合意しています。
今後も、立候補地が増えることも十分考えられます。
日本初のカジノがどこになるのか、本当に楽しみですね。
♦5.日本にカジノができたらどうなる?カジノ法案Q&A
日本にカジノがオープンするのはいつ?
正式に候補地が決まるのは2022年前後、開業は2025年前後と考えられています。
ただし、法案の成立や基本方針の策定などに思いのほか時間がかかり、当初の予定よりはスケジュールが押しているので、これからさらに計画が遅れることも考えられます。
「早くて2025年前後」といった方が正確でしょうか。
はたしてカジノは、どこにできるの?
IRリゾート(カジノ)開業の許可がおりるのは、全国で3か所と法律で決まっています。
IR誘致を表明している自治体は数多くあり、各地でPR合戦が繰り広げられていますが、現在は万博に合わせた誘致活動に力を入れている大阪や、首都圏から誘致を発表した横浜が特に有力であると言われています。
それ以外では、計画の初期から誘致活動を行っている長崎などが候補にあげられますが、地域住民や自治体の判断によって今後の流れが変わることも考えられます。
日本で最大の都市である東京は、自治体側の動きが鈍く、現在ははっきりしない状態が続いています。
日本のカジノで遊ぶには入場料が必要なの?
IR実施法案で、日本人と在日外国人がカジノに入場する場合、料金は6,000円と定められました。
カジノ法案の主な目的は、外国からの旅行者の集客であるため、外国人観光客の入場は無料となります。
入場料を徴収することは、国内におけるギャンブル依存症対策の一つでもあり、基準はまちまちですが諸外国でも取り入れられています。
現在、日本がモデルとしているシンガポールでは、約7,000~8,000円の入場料を徴収しているようですが、マカオ、フィリピン、アメリカなどは無料です。
反対に韓国では、例外もありますが、原則的に自国民は入場することができないなど、各国で規定内容はさまざまで、日本はそれらの中間を取ったような料金設定と言って良いでしょう。
入場制限はあるのか?
日本人と在日外国人には、ギャンブル依存症対策の一環として、入場制限を適用します。
現在は、【週3回・月10回まで】であれば入場可能で、本人確認の手段として、マイナンバーカードの提示や、顔認証の導入が予定されています。
カジノができた結果パチンコへの影響はあるの?
パチンコは「店舗近隣の住民」や「庶民」を顧客として想定しているのに対し、カジノは「観光客」や「富裕層」の来場を見込んで営業しています。そもそものターゲットが異なるため、カジノの開業によりパチンコの存在が脅かされることはないだろう、と考えられています。